混合変数ブラックボックス最適化問題は,サプライチェーン最適化のような産業システムの設計・運用や,レンズ設計のような工業製品開発など,社会の幅広い場面に現れる問題です(図1).
この問題では,目的関数 $f$ に入力 $\bm{x}$ を与えて得られる評価値 $f(\bm{x})$ のみを手がかりに,できるだけ良い入力を発見することを目指します.ここで,入力 $\bm{x}$ には,連続的に調整できる連続変数と,離散的な選択肢から選ぶ離散変数が含まれます.このように,異なる種類の変数が混在しており,さらに目的関数の数式や勾配などの情報を直接利用できないため,混合変数ブラックボックス最適化問題は一般に解くのが難しい問題です.一方で,この柔軟な枠組みにより,幅広い現実の問題に適用できます.
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サプライチェーン最適化
例えば,あるコーヒーのサプライチェーン構成に対して,シミュレーションなどを通じて輸送コストを評価できるとします.このとき,輸送コストができるだけ低い構成を探す問題は,混合変数ブラックボックス最適化として定式化できます(図2).
この例では,入力はサプライチェーン構成,評価値は輸送コスト,目的関数はシミュレータなどに対応し,輸送コストについての具体的な数式や勾配などは必要としません.入力には,原材料や加工後製品の輸送モード $m$,原材料の輸送重量 $q$,倉庫や小売店への加工後製品の輸送個数 $n$ などが含まれます.例えば,「トラック」「鉄道」「航空」「海上」輸送などの選択肢から輸送モードを選ぶ変数 $m$ は,離散変数の一種であるカテゴリカル変数です.原材料の輸送重量 $q$ は,連続的に調整できるため連続変数となります.一方,加工後製品の輸送個数 $n$ は,1, 2, … のような整数値をとるため,離散変数の一種である整数変数となります.
レンズ設計
また,あるレンズ系の構成に対して,シミュレーションなどを通じて性能を評価できるとします.このとき,性能ができるだけ高いレンズ系の構成を探す問題も,混合変数ブラックボックス最適化として定式化できます(図3).
この例では,入力はレンズ系の構成,評価値は性能,目的関数はシミュレータなどに対応し,性能についての具体的な数式や勾配などは必要としません.入力には,レンズのガラス $g$,レンズ面の曲率 $c$,レンズ面間の距離 $d$ などが含まれます.例えば,カタログに載っている有限個の候補からガラスを選ぶ変数 $g$ は離散変数です.レンズ面の曲率 $c$ やレンズ面間の距離 $d$ は,連続的に調整できるため連続変数となります.
離散変数の種類
離散変数がとる値にはさまざまな種類があります.ここでは,代表的な例として,カテゴリ,整数,点集合$^{[1]}$を紹介します.
カテゴリカル変数
カテゴリカル変数とは,自然な順序や大小関係を持たない複数の選択肢から選ぶ離散変数です.先述のサプライチェーン最適化の例では,「トラック」「鉄道」「航空」「海上」などの選択肢から輸送モードを選ぶ離散変数がありました.これらに番号や順序を割り当てることもできますが,その順序が最適化上で意味を持つとは限りません.このような場合,輸送モードはカテゴリカル変数として扱います.
整数変数
整数変数とは,整数値をとる離散変数です.先述のサプライチェーン最適化の例では,加工後製品の輸送個数は1個,2個,3個, … のような整数値で表されました.このような値は連続的には変化せず,整数単位でしか変化しないため,整数変数として扱います.
整数変数はカテゴリカル変数と異なり,値の間に自然な順序や大小関係があります.例えば,3個より8個の方が5個多いという関係には明確な意味があります.
点集合から選ぶ変数
点集合から選ぶ変数とは,あらかじめ与えられた点集合の中から一つの点を選ぶ離散変数です.先述のレンズ設計の例では,複数のガラス候補がカタログとして与えられており,その中から使用するガラスを選びます.各ガラスは,ある波長の光に対する屈折率などの物性値を持つため,その物性値を座標とする点として表すことができます.このとき,考慮する波長の数を1, 2, … と増やすと,点集合が定義される空間の次元数は1, 2, … と増加します(図5).
このように,各候補が単なるカテゴリではなく,何らかの数値的な特徴を持つ点として表される場合,その変数は点集合から選ぶ変数として扱えます.工業製品の設計現場では,物性値自体が連続的であっても,製造コストなどの理由から,実際にはカタログに載っている有限個の候補から選ぶことがあります.
整数変数は,1次元の数直線上に等間隔に並んだ点集合から一つの点を選ぶ変数とみなせます.一方,点集合から選ぶ変数では,点集合が1次元であっても等間隔に並んでいる必要はなく,2次元以上の空間上に定義されることもあります.
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- 混合変数ブラックボックス最適化の難しさとCMA-ES系手法
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参考文献
- [1] Kento Uchida et al., “CMA-ES for Discrete and Mixed-Variable Optimization on Sets of Points,” In Parallel Problem Solving from Nature (PPSN ‘24), 2024.
- [2] 野村将寛, 秋本洋平, “CMA-ESによるブラックボックス最適化,” 技術評論社, 2025.